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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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栄養と病気

先日校医をしている学校で、栄養と病気についてお話してきました。新しい話題ではありませんが、このことについて述べましょう。  中国では古来医食同源といって、病気のもとは食の乱れから来ると信じられていましたが、ある意味真実をついています。江戸時代では参勤交代で出府した地方の武士が、江戸で体調を崩し これを江戸わずらいといったそうですが、その原因はコメ主体の食事で脚気をおこしたからだそうです。実際 歴代徳川将軍が総じて短命なのは、コメ中心の食事のせいもあったとされています。脚気はビタミンB1不足が原因です。麦メシにはビタミンB1が含まれ、脚気をおこしません。
 一方栄養過剰で起こす病気には、塩分過多の高血圧や腎炎 カロリー過剰の糖尿病や肥満症は容易に想像がつきますが、先天性アミノ酸代謝異常はここ1世紀 医学の英知でしかも栄養管理で病気克服した疾患の代表です。フェニルケトン尿症 メープルシロップ尿症 ホモシスチン尿症 チロシン尿症などが有名です。これらは、新生児期にけいれん 吐き気 毛髪の色素異常などで気がつかれます。フェニルアラニン ホモシスチン チロシンなどのアミノ酸を分解代謝出来ないこどもが、それらの栄養をとり続けることで発症します。治療は、脳の成長途上の一時期 アミノ酸除去食(除去ミルク)を与えることです。
 しかし、一般の方がそれら疾患を早期に見つけることは難しいことです。そこで生まれて6-7日目のこどもの血液を採取して、それらのアミノ酸の濃度が高いか調べる方法が確立され、発見者の生化学者ガスリーの名前をとって、ガスリー法とよばれる検査が世界中で採用されています。さらに現在では、タンデムマス法をもちいたさらに詳しいスクリーニングも行われています。除去ミルクで育ち、現在社会で活躍する患者さんも30-40代になりました。あらためて、医学の進歩により医食同源を治療に活かした例といえるのではないでしょうか。(文責 院長・若杉 直俊)