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トランス脂肪酸

 米国FDA(食品医薬品局)は、2015年6月16日、アメリカにおいて3年以内にトランス脂肪酸を生成する水素添加油脂(partially hydrogenated oils:PHOsと略す)の加工食品への添加を禁止する通達を出しました。
 トランス脂肪酸とは何でしょう。トランスの反対語はシスです。化学をかじった方ならきいたことがあるでしょう。となりあう炭素の二重結合のまわりに水素が結合する場合、同じ側ならシス結合、反対側ならトランス結合です。天然の不飽和脂肪酸はシス型で存在します。リノール酸やオレイン酸またEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は天然由来ならほぼシス型で、体によいことはよく知られています。しかしマーガリンのような人工油脂を作ると、PHOsが出来ます。飽和脂肪酸を水素添加で臭いを減少し個体を半固体化して不飽和脂肪酸にする工程にできます。このトランス脂肪酸が心筋梗塞等をおこすと考えられています。ところで天然の不飽和脂肪酸でもウシやヒツジのような反芻動物では極く微量なトランス脂肪酸が胃の中で生成されるとされていますが健康には問題ありません。FDAはトランス脂肪酸を1日総摂取カロリーの1%以下になることをめざしていますが、日本人に当てはめると1日2g以下であり、現行では平均的な日本人の摂取量が平均0.8-0.9gと報告されていますから、おおむね健康には心配ないでしょう。しかしアメリカ人のジャンクフードの摂取量は尋常でなく、この規制によりCDC(米国疾病対策センター)では、年間 心筋梗塞で1-2万件の減少 冠動脈疾患の死亡を3-7千人減らせるだろうと推計しているようです。
(文責 院長・若杉 直俊)

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