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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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高齢者の水痘ワクチン

 水痘は、こどもでまだ罹患していない児が水痘患者に接触して、全身に水疱をきたす疾患です。昨年から3歳未満の小児へ公費でワクチンが開始されたために、急速に外来患者が減ってきました。「風が吹けば桶屋が儲かる」式の推論ではないのですが、これから成人の帯状疱疹が増加するかもしれません。
 帯状疱疹は、子どもの頃水痘にかかったほとんどの方が脊髄の感覚神経節細胞中にウィルスをしのばせ、体調不良などによる免疫力の低下にともなって発症する疾患です。80歳までに日本人3人に1人が発症するとされています。水痘に対する免疫力が持続している間は発症しないのですが、実は免疫力維持のためには常日頃の生活の中で水痘ウィルスに遭遇していることが肝要なのです。このことを医学的にはブースター効果といいます。
 ところがこどもの水痘発症がワクチンで抑制されつつある今、成人が水痘ウィルスと接触する機会が激減するのは自明です。そこで帯状疱疹が増えるのではないかと心配されているわけです。どうしたらよいのでしょうか。マスコミでも取り上げられているのが、成人の水痘ワクチンによる帯状疱疹予防です。
 水痘ウィルスの抗体価が一定以上ないと帯状疱疹にかかる可能性があるために、その抗体価を維持するために成人の水痘ワクチンが検討されているのです。その費用は、1回約1万円ほどです。回数や時期に関してはまだ明確な規定がされていません。しかし60歳をすぎてまだ帯状疱疹を発症していない方は、ぜひ検討するべきではないでしょうか。当院でも希望する方には、接種をすすめています。
(文責 院長・若杉 直俊)