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ボツリヌス毒素治療

 ボトックス注射と言えば美容整形の定番で、ほうれい線の美容などに用いられますが、本来は医療用の薬です。ボツリヌス菌の毒素で神経末端の筋肉へのシグナルをストップする作用があります。この作用を用いるヒトの神経疾患への適応を、アメリカ神経学会はガイドラインとして明示しました(Neurology 2016:4.18)。
 その疾患は、①慢性片頭痛 ②成人の痙縮 ③頚部ジストニア ④眼瞼攣縮 です。①に関しては、従来はあまり効果なしとされていましたが、厳密な治療計画では十分効果があることがわかりました。さらに現在使用可能なボツリヌス毒素製剤は、アメリカでは4種類ありそれぞれの特性を活かして使い分ける治療が必要となっています。日本では2種類のボツリヌス毒素が使用可能で、①~④までの疾患に適応も通っていますが、われわれ開業医のレベルではあまり治療に供していません。それぞれ特殊な疾患ですので、専門の神経内科医と相談して治療計画をたてることが必要です。
 毒をもって毒を制する。ボツリヌス菌による食中毒は呼吸困難を生じ、昔熊本のカラシレンコン中毒で有名になりましたが、有害作用を逆に利用して治療に供する逆転の医学の代表とも言えるでしょう。(文責 院長・若杉 直俊)