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神経性食思不振症

 国内に把握されているだけで26000人の患者がいる病気です。女性に多く、思春期に発症します。極端な食事量の低下や食べても食べても嘔吐を繰り返すために、体重がどんどん低下し適切な介入なしでは、最後は餓死する病気です。かつてアメリカの兄弟歌手カーペンターズの女性ボーカル カレン・カーペンターがこの病気でなくなりました。
 先日ドキュメンタリー番組で、この病気により刑務所に収監されている女性がが多いことを取り上げていました。日本国内には4カ所の女性専用の刑務所があり、そのなかの北九州刑務所が取り上げられていました。すべての例でみられるわけではないのですが、スーパーなどで食品を購入しても、結局嘔吐してしまうためお金を払うことに無駄を感じる患者さんが金を払わず万引きをして持ち帰り、その常習性により収監されるというのです。
 この病気の病理として、大人になることを拒否する心理が背景にあるという精神医学者が多いようです。また、幼少期の親子関係 特に母親との関係にゆがみを持つ例も多くみられます。さらに食行動としては、拒食の逆である過食(ブリミア)がみられることもあります。犯罪に走る神経性食思不振症は論外としても、この病気を見過ごすことは死にもつながりますし、若い女性では無月経になりこどもを欲しても不妊症となります。本人は病識がないケースが多いため、周囲の目が必要な疾患です。(文責 院長・若杉 直俊)