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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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人口義肢とBMI

 NHKの番組プロフェッショナルでも取り上げられていましたが、四肢欠損の障がい者に筋肉からの微弱な電気を用いて人工の把握運動を制御する義肢が、ただ整容のために装着される義肢に変わって開発されています。兵庫県立リハビリ病院の陳隆明博士は、この方面のパイオニアです。
 一方脳梗塞などで四肢麻痺が起こった場合は、どのように対応するか。多くは地道なリハビリで動かない四肢を訓練するのが王道でしょう。最近は、下肢のリハにはHAL(Hybrid-assistive Lib)といって、筋電図を機械に伝えてリハを助ける機械が導入されて効果をあげています。ところが上肢ではうまくいきません。近年、脳波をコンピューターで読み取り、その刺激を上肢に副えたロボット義肢に伝え、その介助によって機能回復をはかる手段が開発され、近いうちに実用化されることが予想されています。このシステムをBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)と呼びます。
 慶應大学病院リハビリ科の里宇教授を中心としたグループが、HANDS(Hybrid-assistive Neuromuscular Dynamic Stimulation)と命名した治療法で、200名以上の方々に試行して良い結果を得ています。その方法は、脳梗塞患者に手指曲げ伸ばしのイメージをしてもらい、その際記録される脳波をもとに上肢に副えたロボット義手に情報を伝え動作させます。そのことで、脳の運動領野の電気的信号が脊髄を経て直接手の筋肉につながる経路が再開通し、結果的にリハビリが促進されるというのです。
 脳波を直接筋肉や神経経路に伝える試みは以前からなされ、東北大学・半田名誉教授によるFES(機能的電気刺激)の研究は有名ですが、あまり臨床的には成功しませんでした。里宇教授はそれとは別な考えで行うリハビリであり、今後の展開が期待されます。
(文責 院長 若杉直俊)