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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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肺気腫

【肺気腫】
肺気腫という病気は、あまり知られていないようですが重要な病気です。死因として1位の悪性腫瘍や2位の脳血管疾患はだれでも知っていますが、肺気腫は死因の第7位をしめています。その多くが喫煙によるものです。我々は喫煙指数を重要視しますが、その計算は 1日の平均喫煙本数×喫煙年数 です。つまり平均20本を15年間吸っていれば300となります。この指数が600を超えると、肺気腫を発症しやすいとされています。
症状は、息切れです。はじめ坂道を駆け登るのが苦しくなり、普通の登坂でも苦しくなり、ついで平地でも同様となり、最後は座っていても呼吸が苦しくなります。肺は空気中の酸素をとりいれ 二酸化炭素をはきだす臓器ですが、肺気腫になるとこのガス交換がうまく出来ず、血液中の酸素飽和度(ヘモグロビンと酸素の結合割合 SpO2とあらわします)が下がり、90%をきると苦しさが明らかになります。たとえていえば、普通の人がいきなり3000メートルの高地に移動したようなものです。診断は呼吸機能検査です。肺気腫の方は、一気に空気をはき出すことができず、1秒率(呼気全体のうち、はじめの1秒ではき出す量の割合)が70%を切ると陽性と診断されます。これを簡便にしる方法として、口元から30cm話したろうそくの火を、口をすぼめずはきだす息で消せれば肺気腫の可能性は低いでしょう。
治療はただちに喫煙をやめること、薬としては抗コリン薬の吸入とステロイド薬の吸入です。最近は喫煙する人が少なくなってきましたが、日本人はまだまだ喫煙率が高い国です。さらに、タバコを吸わない人も副流煙(周囲のタバコの煙)で肺気腫や肺癌を引き起こす可能性があります。タバコを吸う方は、少しでも減煙を そして最後は禁煙をめざしましょう。(文責 院長・若杉 直俊)