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遺伝性乳癌

【遺伝性乳癌】

 皆さんも耳にしたことがあるでしょうが、米女優 アンジェリーナ・ジョリーが両乳房を癌の予防のため 切除しました。日本でも乳癌は増加しています。30代の若い患者さんも増えています。それらの乳癌のなかで、遺伝による発病が強く疑われるものがあることがわかってきました。それが遺伝性乳癌です。
 癌を引き起こす原因として たとえば子宮頚癌はパピローマウィルスが大いに関与していることが知られています。また胃癌の一部にヘリコバクターピロリ菌が関わっていることも衆知の通りです。この遺伝性乳癌は その原因に遺伝子が関与するというのです。もちろん 遺伝子の関与する癌は乳癌以外にも知られています。それらの遺伝子を総称して癌遺伝子とよびますが、乳癌を引き起こす癌遺伝子のうち最も強力なのが BRCA遺伝子で二つのタイプが有り それぞれ BRCA1 BRCA2とよびます。これらの異常がみられると そうでない方より明らかに乳癌が発症しやすいのです。さらにこの遺伝子は卵巣癌の発症にも関与しています。報告されている統計では 70歳までに BRCA1陽性者では39-87%が BRCA2陽性者では26-92%が 乳癌を発症するとされています。
 それでは この検査をどのように受けるべきでしょうか。この検査は 女性がすべてうける検査ではありません。肉親のなかで乳癌を発症した方が多い家系の女性が受ける検査です。あるいは 血縁のあるいとこやおばさんが陽性と判明した方が受ける検査です。検査は7ccの血液を採ります。費用は25万円くらいで自費扱い(保険がきかない)です。不幸にして検査陽性となった方は、乳癌の専門医とカウンセラーの指導の下 事後処理を受けていただくことになります。現在さいたま市では、乳癌検診を施行しています。気になる方は、検診を受けた際 この遺伝性乳癌について医師に相談するとよいでしょう。
(文責 院長・若杉 直俊)