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帯状疱疹とワクチン

 2016年7月の記事でこの問題を報告しました。我が国の人口高齢化により、帯状疱疹はますます増加しています。宮崎県皮膚科医会(46施設が参加)の調査によると、1997年に3.61/1000人・年の数字が2017年には6.07/1000人・年と、20年間で68%も増加しています。
帯状疱疹の治療は、発症早期に診断し抗ウィルス薬を用いること。しかし治療が遅れると、頑固な神経痛を後遺症(PHN)として残すのです。予防にはワクチンが有効です。現在日本で摂取可能なのは「ビケン」から発売されている水痘ワクチンです。愛知医大皮膚科の渡辺教授は50歳以降でワクチンを接種すると、リスクを減らすことができると提言しています。さらに2018.3グラクソ・スミスクライン社は、「シングリックス」ワクチンの製造承認を発表しました。これは生ワクチンと異なり、水痘ウィルスの糖蛋白にアジュバント(免疫反応を増強させる物質)を結合したものです。いささか副作用もあるようなので臨床利用はまだ先のようですが、2回の筋注で帯状疱疹発症を91%減らした(N Engl J Med:2015 372:2087-2096)との報告が有り、おおいに期待されるワクチンです。
あわせて渡辺教授は、帯状疱疹を発症した場合はご本人も含めて初めに診察した皮膚科以外の医師が早期に診断し、抗ウィルス剤投与する重要性を述べています。また最近は1日1回投与のアメナメビル(薬品名アメナリーフ)も登場し、従来の薬よりも使いやすい薬剤も使用可能です。高齢者のひりひりするような発疹は、すぐに医療機関を受診しましょう。そして発症予防もぜひ考慮下さい。 
(文責 若杉直俊)