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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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ウェストナイル熱

【ウェストナイル熱】
 デング熱 エボラ出血熱 SFTSに続いて、第4弾 ウィルス感染症の話題です。ウェストナイル熱は1937年にはじめてウガンダのウェストナイル地方で発見され その後アフリカ ヨーロッパ 中東 中央アジアへと蔓延していきました。1999年突然ニューヨークで流行が見られ、その後2012年まで米国・カナダの37000人が発症 そのうち1549人が死亡しています。原因はデング熱や日本脳炎をひきおこすのと同じフラビウィスル族のウェストナイルウィルスです。
潜伏期間は3-14日 感染者の25%が発病し、症状は発熱 頭痛 下痢・嘔吐など、症状は1週間で回復します。発症者中200人に1人が髄膜炎や脳炎を合併します。ベクターはイエカ(日本脳炎もコガタアカイエカ)やヤブカで、デング熱のシマカは媒介しません。自然界ではカラスやスズメなどの鳥類が保菌者となり、感染した鳥類を吸血したカが他の動物を吸血し発症します。多くの脊椎動物も感染しますが、ほとんど症状は出ません。治療は対症療法のみ、ウマのワクチンは開発されていますが、ヒトのワクチンはまだ開発されていません。
デング熱やウェストナイル熱を現時点で、完全駆逐することはできません。日本では、各空港およびその周囲で蚊の捕獲を行いウィルスの有無を調査しています。まさに水際作戦で、この病気の侵入を防いでいるのです。しかし、いつアメリカのような流行が起こってもふしぎではありません。デング熱とともに速やかなワクチンの開発が望まれるところです。

(文責 院長・若杉 直俊)