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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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セアカゴケグモ

【セアカゴケグモ】

 平成7年大阪でみつかって以来、現在まで西日本を中心に全国35の都府県に分布していることが判明しているクモのお話しです。セアカゴケグモとはなんぞや。ご存知の方も多いかもしれませんが 毒をもつクモで、かまれると咬傷部位に軽い痛みやはれ、熱感や掻痒感が生じます。まれに全身症状として 吐き気 腹痛 発熱 頭痛 全身の発疹などが生じます。このクモと同じように毒をもつクモがその後発見され、ハイイロゴケグモといい 13の府県で報告されています。埼玉県でもセアカが2014年 三郷市でみつかりました。
 セアカの原産地はオーストラリアで、船便のコンテナに付着して日本に来た可能性が高く 大阪港周辺ではじめて発見されました。ハイイロは亜熱帯地方が原産です。大きさは1cm前後で、セアカは背面に ハイイロは腹面に 赤い斑点がみられます。日当たりのよい庭の 石の下 プランター内などに潜んでいます。ともにヒトへの攻撃性はありませんが、コケグモをみつけても決して巣手ではさわらないこと。もし噛まれたら医療機関への受診が必要です。重症例には血清療法が行われますが、抗血清はオーストラリア産で 日本で簡単には手に入りません(香川医科大学に備蓄あり)。クモ自体は家庭用殺虫剤でも駆除できますが、1匹でもみつかれば周囲に潜んでいる可能性があります。冬期には活動がなく 咬傷事故の報告はほとんどが6-10月に報告されています。
 本来日本にはいなくて ある時期から国内侵入した生物を外来生物と呼び、そのうち ヒトに害を加え、環境によくない影響を与える生物を外来特定生物と呼びます。このコケグモはまさに外来特定生物に指定され 駆除すべきものとされていますが、すでに半数以上の都府県に広がっているのが実情です。くれぐれも咬傷事故に注意しましょう。
 
(文責 院長・若杉 直俊)