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医薬品特許とジェネリック

 8月はじめのTPP交渉決裂は、一番はニュージーランドの乳製品の関税問題でしょう。しかし、あわせて特許や知的財産権の保持期間も妥結を阻止した要因とされています。特に医薬品は画期的な新薬が開発されると全世界で数千億の利益を生み出します。そして特許が切れると安価な模造品が発展途上国でも製造されるため、そのうまみも消え去ります。その模造品をジェネリックとよび、日本語に訳せば一般品という意味になります。
 日本では、医薬品特許の期間は20-25年間とされています。実際の現場では、厚労省が国内で医薬品として使用可能と認定してから10年たつと、他のメーカーでも同等品の製造が可能となるのです。現行の世界の貿易基準であるWTO(世界貿易機構)のTRIPS協定では最長20年とされていますが、今回のTPPではアメリカが20年はそのままに、事務処理の時間的ロスを保証する期間延長を求めています。
 日本のジェネリック薬は、2011年の統計では全医薬品のなか数量ベースで22.8%と欧米の3分の1ほどの使用量となっています。ジェネリック薬がまだ出ていない新薬は別として、世界水準では少ない方でしょう。アメリカ同様新薬開発に力を入れている製薬会社を多く抱える日本では、アメリカ同様国外にむけては特許の延長は国益にかなうかもしれません。しかし、発展途上の国では安価で効果の高いジェネリック薬が求められています。実は厚労省も医療費の高騰をおさえるべく、国内の医療現場でもジェネリック薬の使用をすすめています。TPPを国益一辺倒で考えるか、環太平洋世界の発展も考えるかは大変難しい問題なのです。
(文責 院長・若杉 直俊)