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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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帝王切開と自然感染

 日本では現在はまだあまり話題にはなりませんが、帝王切開分娩直後 児に自身の腟液塗布を求める母親がイギリスでは増えているといいます。綿棒に付着した腟液を新生児の口や目元、皮膚に塗りつけることを医療関係者に要求するようです。
 完璧な除菌がかえってヒトの免疫を低下させることは、何回か述べてきました。しかし、新生児にわざわざ経腟分娩の環境をまねて、人工的に菌感染を行う事がよいかはまだ不明です。ロンドンインペリアルカレッジのJ.Cummigton博士は、自身の施設内では要求されても実行せず、帰宅後ご両親が自己責任で行う行為は自主性に任せるとイギリス医学会雑誌(2016年2月23日号)で述べています。
 経腟分娩児では、新生児結膜炎を防ぐべく出産直後に抗菌点眼薬をさします。さらに経腟分娩では、通常あまり毒性のないグループBブドウ球菌(GBS)感染症が起こることもしられています。この腟液塗布は、児の腸内細菌叢によい影響を与えるだろうと信じての行為だそうです。全く否定はしませんが、博士の態度が多くの医療関係者の立場であると思います。さらに博士は、新生児が感染を起こした場合そのような行為が行われたことを、両親がフランクに医師に話せる環境も重要だと語っています。
(文責 院長・若杉 直俊)