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カブトガニと医学

 今から2億年以上前から地球上に生息して、その姿をとどめるカブトガニ。そのカブトガニが人類に貢献していると聞いたらみなさんどうお考えでしょうか。
 カブトガニの血液は青色です。これは人間の赤血球にあるヘモグロビンにかわって、ヘモシアニンを血球内にもち、これが酸素と結びつくと青くなるためです。その血液から抽出した物質が人類におおいに貢献しています。その物質をLAL(Limulus Amebocyte Lysate)と呼びます。数億年生き延びたカブトガニの血液は、細菌毒素にふれるとすぐ固まり自らへの細菌侵入を防ぎます。細菌特にグラム陰性菌の毒素(エンドトキシン)は、人間にとってもショックをおこすほど有害です。その性質を利用して、医療に用いる器具や薬品などにその毒素が含まれるか否かをこのLAL試薬で確かめるのです。
 いずれ医療における殺菌消毒のお話もする予定ですが、目には見えない細菌のそのまたさらに細かい毒素を検出して、安全な医療を行う手助けをしているカブトガニ。日本における生息域は環境の変化でどんどん縮小していますが、アメリカのカリフォルニア付近にはこのカブトガニが数多く生息し、LALを産出中です。ちなみにその試薬は、1Lで1万ドルほどするそうです。(文責 院長・若杉 直俊)