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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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人間ドック検査値の評価

【人間ドック検査値の評価】

 人間ドックや市の特定健診 これらは病気特に生活習慣病の発症を早期に診断し、必要であれば早期に治療をするきっかけを知るための制度です。ところで、健診では血圧測定 採血 心電図 レントゲン撮影など施行しますが、その際の血圧の値や採血の結果の評価が今年から変更された あるいは甘くなったと感じている方が多いようです。実際はどうなのでしょうか。
 人間ドックを研究している学会が4月に新基準を示しました。その内容は、従来 正常血圧の基準は 65歳未満で 130/85以下、65歳以上が 140/90以下 でした。新基準では 65歳以上で 147/94以下 と改訂されました。コレステロール 特に悪玉LDLコレステロールでは 従来正常 正常が140未満であったのに対し、新基準は 年齢に関係なく男性は178未満、女性は65歳未満で183未満 65歳以上で190未満としました。これに対して、高血圧学会 動脈硬化学会などが反論を表明し、治療の適否は従来の基準で行うべきことを表明しています。これをうけて 人間ドック学会でも、新基準は旧来の基準で治療している方が治療を中断する指針ではないことを表明しています。
 実際の現場はどうなのでしょうか。高血圧 高脂血症は、まずは食事・運動療法が基本です。塩分を控え 脂質の多い食事を避け、適度な運動を継続するように指導します。そのうえで、従来基準を超える方の仕事や家庭環境 喫煙歴、その方の体重や病気に関する考え方などを聴いて、総合的に投薬を決めています。一律に数字がひとつ異常値を示したから治療 というわけではありません。人間ドック学会でも、癌なし・喫煙なし・他の検査に異常なしの超健康人1万人以上の値を参考にこの基準値を決めたのであって、現行の治療の行き過ぎを指摘したわけではないのです。基準はあくまでも基準であって、治療は医師とよく相談して決めましょうというものです。
 健康の考え方は人それぞれでしょう。しかし、最後の時を迎えるまでなるべく自立した生活を望むのはすべての人の思いでしょう。病気の治療とそれにともなう検査値に疑問を覚える方は ぜひ主治医に相談してください。
(文責 院長・若杉 直俊)