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ウオルマン病

 聞き慣れない病名でしょう。筆者もほとんど知識がありませんでした。生後1-2ヶ月で嘔吐下痢を繰り返し、体重増加も不良 血液検査では肝機能の数字に異常を来す児でこの疾患を疑います。50万人に1人の割合で発症します。一方小児期から成人にかけて発症するコレステロールエステル蓄積症(CESD)という病気もあります。4万人に1人の発症で、肝機能異常や肝硬変 副腎の石灰化などがみられます。
 2つの病気ともライソゾーム酵素リパーゼ(LAL)の遺伝的な欠損から起きる病気です。診断は、この病気を疑った方で血液のLAL活性を測定し、明らかに低下した場合に診断します。従来は、診断がついても低脂肪食やスタチン系薬剤で脂質異常を改善するしか方法がなく、ウオルマン病と診断された場合ほとんどが1歳までになくなり、CESDも予後はあまりよくありません。
 ところが米国で開発されたLALの働きを持つ セベリパーゼ アルファ遺伝子組み換え酵素を投与すると、この疾患の進行を食い止め予後も改善できるのです。そして、今年から日本でもこのクスリが保険適応で使えるようになりました。ただしその金額たるや、1バイアル20mgで127万円します。これを2週間毎に体重1kgあたり1mgの量で注射し続ける必要性があるのです。
 このような、稀少疾患に効果のある薬をオーファンドラックといいます。しかし、患者さんにとっては金額の多寡にかかわらず命をつなぐ手段です。数少ない難病患者にオーファンドラッグを途切れずに手渡すのも、多くの国民の義務であると筆者は信じます。(文責 院長・若杉 直俊)