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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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禁酒か節酒か

 仕事帰りのちょっと一杯、サラリーマン男性の至福の一時でしょう。ところがアルコールがないと、手の震えや不安にかられるアルコール依存症になると、これは病気です。日本のアルコール依存患者は109万人います。そのうち治療対象となっているのは約4万人、しかも長期断酒に成功するのは約2割だそうです。
 2016年6月 日本精神神経医学会のシンポジウムで、アルコール依存症が議題として取り上げられました。従来の治療では完全に断酒しないと完治と考えず、治療脱落例が大半でした。しかし、節酒も治療効果有りとすると 31例の依存症の内 長期良好14例 短期良好6例の3分の2に効果が見られたと、国立福岡病院から発表がありました。さらに300人に対象を広げ、節酒指導を続け 日本酒換算1日2合以下群で1年後も2合以下持続 1日4合以上の群で、1年後2合以下へと多くの例で減酒ができたというのです(杠 岳文院長)。つまり、断酒ではなく、節酒を目標にする治療が大事だということです。
 従来からの断酒剤ジスルフィラムは悪酔いを誘発し酒を断つ薬ですが、真の酒飲みはまず服用継続しません。2013年新しい薬アカンプロサートが断酒薬として承認されました。さらに現在治験中のナルメフェンも将来節酒剤として使用できるでしょう。またアルコール依存症には、うつ病合併例も多いのですが、その治療も併用するとさらによい結果が得られています。お酒のみの皆さん(筆者も含めて)節酒をめざしましょう。(文責 院長・若杉 直俊)