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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

記事一覧

セルフメディケーション税制

 OTC薬という名前をきいたことがありますか。OTCとは、Over The Counter(カウンター越しに)という言葉の略で、従来医療機関のみで処方していたものを薬局で購入することが出来るようになった薬剤を意味します。テレビコマーシャルでも、お医者さんと同じ薬と称して放送しています。花粉症のアレグラや鎮痛剤のロキソニン、胃薬のガスターなどが有名です。
 WHOでは、自分で自分の病気を治すことをセルフメディケーションと定義していますが、その趣旨で病院受診せず薬局で効果の確実な薬を購入した場合、税制面で優遇する制度が発足しセルフメディケーション税制とよび、平成29年度(30年の申告)から始まります。
 税の還付を受けるためには、まず薬局のレシートを必ずとっておくことが重要です。購入された薬品の外箱には、セルフメディケーション 税控除対象品 の刻印がおされているはずです。くわしくは薬局で相談下さい。所得税・住民税を支払っている家庭で、年間1万2千円以上の購入で対象になります。従来の医療費控除は10万円以上でしたから、ハードルは下がったわけです。ただしこの控除にはもう一つ条件がつきます。申請者が、1年間に会社や自治体の各種検診をうけていることが前提条件です。
 医療者として各種の検診を多くの方に受けて欲しいのですが、現在の受診率は40%前後であり、国もアメとムチで国民に健康を強いる時代となってきているようです。
(文責 院長 若杉直俊)

禁煙の話題

 日本禁煙学会の禁煙治療と支援委員会(委員長・藤原久義先生)は、若年者(35歳未満)と未成年者(20歳未満)の禁煙治療指針を学会誌に発表しました。(日本禁煙学会雑誌2016.11:145-151)
 それによると20歳以上35歳未満では禁煙治療の標準手順書どおり、つまり禁煙指導とニコチンガムやパッチ等で徐々にニコチンへの依存を減らすか、バレニクレリン(商品名チャンピックス)を内服することで、喫煙時の不快感を誘発して喫煙習慣を解消するかの2通りがあります。一方、未成年においてはカウンセリングが基本であり、喫煙のマイナス面をしっかり理解してもらうことが重要とされています。現在の所、薬物療法に確実な効果を認める報告がなく、どうしてもというならニコチンパッチやガムによる離脱療法を選択すべきとしています。
 以前にくまもと禁煙フォーラムの話題も提供しました。未成年層にいかに喫煙には弊害があるかを浸透させるために、橋本先生が地道な努力を積み上げてきた事実を述べました。学会での指針でも、同様な結論を得ています。現在タバコを吸う方々にもぜひ知っていただきたいし、未来あるこどもの喫煙を出来るかぎり減らす運動を展開したいと思います。 (文責 院長 若杉直俊)

高齢者の定義

 マスコミ等で報道されている、高齢者を75歳以上と定義した事実がさまざまな憶測を呼んでいます。年金受給開始を遅らせたり、政府の医療保険・老人負担割合を減らしたりするのでは、とあまりいい噂はありません。
 この議論は、日本老年医学会・高齢者の定義を再検討するワーキンググループが、2017年1月5日に開かれた記者会見で「75彩以上を高齢者と定義する」と提言したことから始まりました。
 座長の大内尉義氏(前東大医学部老年医学科教授)は、「高齢者の暦年齢を75歳以上とすることは、精神・身体活動能力に関する時代的変化、国民の意識と一致している。これを契機に、高齢者の労働のあり方を議論してもらいたい」と述べています。
実際内閣府の調査で、高齢者を65歳以上と意識する国民の割合が5%程度であったという事実とも合致します。さらに2013年の調査では、日本人の健康年齢(積極的な医療も介護も不要な状態)は男性で71.11歳 女性で75.56歳と世界1位であることが、世界的な医学雑誌ランセットに報告されています。しかし男性においては、75歳は平均健康寿命をオーバーするために、この定義を高齢者福祉への支出削減へつなげるには無理があるのではないでしょうか。筆者も一国民として、この議論を見守っていきたいと思います。(文責 院長 若杉直俊)

消毒とは何か

 102回目のコラムで、カブトガニによる毒素検査の話をしました。20世紀前半の医学は感染症の克服が大きなテーマでした。結核にしろ、マラリアにしろ世界規模の感染症にはいまだ人類は勝利を得ていません。しかし1つの個体におきる感染性疾患には、消毒法と抗生剤の発見とワクチンの開発により勝利を得ることが出来ました。
 そもそも感染症とは、ヒトにとって有害な微生物によっておこされる疾患です。その侵入経路は、皮膚その他への接触・食事などの経口摂取・傷口からの侵入・蚊などの媒介動物のからの刺入・不衛生な手術時など多岐にわたります。さらに病原微生物も、細菌・ウィルス・微細な昆虫等さまざまです。特に19世紀までの医療では、外科的手術は麻酔もなく消毒法も確立せず、危険な行為でした。
 19世紀パスツールは、腐敗の原因が汚れた空気中の細菌の仕業であることを究明しました。その後様々な感染性疾患の原因が細菌によって起こることが判明し、その原因菌の発見があい続きました。一方細菌の多くは数ミクロメーターのサイズであり濾紙で濾されるのに対して、濾紙を通り抜ける感染性微生物の存在が1892年ロシアのイワノフスキーにより発見されました。そして約40年後スタンレーによって電子顕微鏡でその存在を直接見ることが出来るようになったのです。それがウィルスです。スタンレーは1946年のノーベル医学生理学賞授賞者です。
 以上述べた細菌・ウィルスさらにその後同定されたクラミジア・リケッチア・原虫などの病原微生物を、可能な限り体内侵入阻止をするのが消毒です。細菌が高熱に弱い性質を利用した煮沸消毒は比較的初期から採用されています。アルコール消毒は、20世紀初頭ドイツの衛生学者ペッテンコッフェルが提唱し世界中に広がりました。活性酸素を働かせ、細菌やウィルスを死滅させるのが塩素消毒やエチレンオキサイドガスによる消毒です。ところで、これから到来する冬季の風邪予防のうがいも消毒の一つです。原始的な水分で洗い流す方法ですが、大いに効果があります。ぜひこれからは、うがい手洗いの励行を。(文責 院長 若杉直俊)

医療と国費

 高齢者の増加にともない、医療費の増加が見込まれています。予測では、H29年度は6400億円の自然増を見込んでいます。安倍政権はこれを3年間で1.5兆に圧縮する方針で、H29年度1年間で 1400億円圧縮する予定です。その骨子は以下のごとくです。
①70歳以上の高額療養費外来特例廃止と上限額ひきあげ
②高所得者のみ100億円
③外来特例廃止は、住民税非課税全体で400億円
④後期高齢者医療の保険料特例の廃止⑤新たに75歳以上となる人蚤100億円
⑥すでに75歳以上の人も300億円
⑦オプジーボ価格50%で200億円
⑧介護保険で530億円
です。
 現在70歳以上75歳未満では外来負担は2割ですが、これが3割になり自己負担が増します。高額療養費とは、一月あたり約8万円を超えた自己負担分が還付される制度ですが、70歳以上では特例として4万4400円以上の支払額が還付されていました。しかし、今後は外来受診のみで適応され、入院をする場合は70歳でも約8万円が適応され負担が増します。また75歳以上の後期高齢者医療制度における保険料の軽減も大幅に見直される予定です。高額薬剤の問題は、かつてのコラムでも触れました。これはH29年2月から実施されるようです。
 平成29年度からは、医療にかかる負担が特に高齢者で増すことを覚悟しなければならないようです。(文責 院長 若杉直俊)