医学の話題医学の話題

若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

記事一覧

オメガ3脂肪酸

トランス脂肪酸の話を前々回にしましたが、間違われやすいものにオメガ3脂肪酸があり、これは逆に人体に有益な脂肪酸です。今回はこのオメガ脂肪酸のお話をしましょう。
 -COOHという化学記号は脂肪酸に特有の基でカルボニル基とよびますが、これにNaがつけば石鹸になります。この基は脂肪酸が水に溶ける(水溶性 hydrophilic)ために必要な部分です。一方、油に溶ける部分(脂溶性 hydrophobic)にはいくつかの炭素がならびますが、そのうちカルボニル基から一番遠い先端部の炭素から数えて3の倍数にあたる部分に炭素二重結合がみられるものをオメガ3脂肪酸といい、リノレイン散やエイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)などが有名です。EPAは病院で出す薬にもなっています。
 どれくらいのオメガ脂肪酸を摂取すべきか。日本人では1日2.0-2.9gの摂取が理想的とされています。その摂取により悪玉のコレステロールが低下し、心筋梗塞や脳梗塞の予防となります。EPAやDHAが多く含まれる食品は、魚では サケ ニシン サバ イワシなどです。青魚とよばれる魚類に多く存在します。油では アブラナ(キャノーラ)油 ベニバナ油 亜麻仁油などに多く含まれます。炭素二重結合が多いほど油はさらさらしており、バターやラードなどは二重結合が少なく常温では固形となります。人体内部では自然合成できません。
 健康志向の現代において、すぐ薬物に頼るのではなく医食同源の考えで体によい物を摂る生活も重要でしょう。(文責 院長・若杉 直俊)

ストレスチェック

 労働安全衛生法の改正により、2015年12月から50人以上働く企業に義務づけられたのがストレスチェックです。ここ2年間では減少傾向が見られますが、日本は先進国では韓国に次ぐ自殺率の高い国です。グリーンランドやかつてのソ連の衛星国も高い率ですが、1億2千万の我が国では年間3万人ちかくの自殺者が報告されています。そのすべてがストレスを原因とするわけではありませんが、誘因であることは確かです。
 そこで厚労省は、職場単位で各個人のストレスをチェックして高率にストレスを抱える方をはやめに心療科に結びつけるシステムを開発し、この12月から全国的に施行するべき法律を公布しました。その方法は、質問紙による問題点の抽出です。もちろん50名未満の中小企業も、努力目標としてストレスチェックを施行すべきとされています。
 職場のストレスには、長時間労働 3Kとよばれるハードな仕事内容 人間関係などさまざまなものがあるでしょう。今回の手法では、その原因がどこにあるかもわかるような質問になっており、レーダーチャートで読み取れます。法律では、この結果を基にした労働者の解雇や強制的な配置転換は禁じられていますが、上司とよく話し合ってストレスのない勤務状況に改善することが本来の趣旨でもあります。現在各企業に所属する産業医は、この制度の効率的運用のため勉強を重ねていますが、よりよい労働環境が作られることが何より大事なことでしょう。(文責 院長・若杉 直俊)

トランス脂肪酸

 米国FDA(食品医薬品局)は、2015年6月16日、アメリカにおいて3年以内にトランス脂肪酸を生成する水素添加油脂(partially hydrogenated oils:PHOsと略す)の加工食品への添加を禁止する通達を出しました。
 トランス脂肪酸とは何でしょう。トランスの反対語はシスです。化学をかじった方ならきいたことがあるでしょう。となりあう炭素の二重結合のまわりに水素が結合する場合、同じ側ならシス結合、反対側ならトランス結合です。天然の不飽和脂肪酸はシス型で存在します。リノール酸やオレイン酸またEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は天然由来ならほぼシス型で、体によいことはよく知られています。しかしマーガリンのような人工油脂を作ると、PHOsが出来ます。飽和脂肪酸を水素添加で臭いを減少し個体を半固体化して不飽和脂肪酸にする工程にできます。このトランス脂肪酸が心筋梗塞等をおこすと考えられています。ところで天然の不飽和脂肪酸でもウシやヒツジのような反芻動物では極く微量なトランス脂肪酸が胃の中で生成されるとされていますが健康には問題ありません。FDAはトランス脂肪酸を1日総摂取カロリーの1%以下になることをめざしていますが、日本人に当てはめると1日2g以下であり、現行では平均的な日本人の摂取量が平均0.8-0.9gと報告されていますから、おおむね健康には心配ないでしょう。しかしアメリカ人のジャンクフードの摂取量は尋常でなく、この規制によりCDC(米国疾病対策センター)では、年間 心筋梗塞で1-2万件の減少 冠動脈疾患の死亡を3-7千人減らせるだろうと推計しているようです。
(文責 院長・若杉 直俊)

学校検診

 公立・私立を問わず、6歳から18歳のこどもたちは学校保健安全法に基づく健康診断が施行され、今年もほぼすべての学校で実施終了したことであろう。ところで、この学校検診が平成26年度から内容が変更されたことはご存知であろうか。
 大きな改正点は3つ、すなわち①座高 寄生虫卵検査が省かれた②四肢の状態の診察が必須項目にはいった③健診の対象者を小中高および高等専門学校の全学年としたこと、である。この法律の施行規則では平成28年度から実施としているが、昨年来学校健診前に家庭でこどもの肩の高さの違い等の健康調査票を提出されたご両親もおられることだろう。
 座高はかつて発育の指標として必ず計測されていたが、身長・体重を計測すればわざわざ座高の計測する意味がないことがわかり、現在では全く行われていない。寄生虫検査はこの10年間1%以下の検出率のため不要とされた。四肢の状態の観察は、いうまでもなく運動機能につながるもので、健診医が側弯症・股関節疾患・肘の変形などを視診で確認する。家庭でも質問紙に肩の高さや腰回りの左右差がないか回答することになっている。そして、すべての学年の児童・生徒を対象にすることになったのである。
 さらに、平成15年度 検査項目から削除された色覚異常についても、児童生徒がそのために不利益を被らないよう学校職員が十分に配慮することも明記されている。子どもの疾患を早期に把握して治療に結びつけるセーフティネットは、乳幼児検診や就学前健診等多々あるが、つい見逃されやすい運動器疾患も今回の改正でしっかり診察することにより、さらに子どもたちの健康維持がはかられることであろう。(文責 院長・若杉 直俊)

手足口病流行の兆し

 関東地方で手足口病流行の兆しが出ています。手足口病は代表的な夏かぜで、乳幼児を中心に夏季流行します。ここ数年はあまり大きな流行も見られませんでしたが、6月22日から28日の1週間の調査で 北関東の群馬で前週比60%増の7.48人 栃木で2倍増の7.52人と報告されています。埼玉も4.91人でした。
 この数字をどう読むか。小児科を専門に標榜している医療機関のうち、保健所で指定された医療機関では日々流行性疾患の患者数を集計し、週ごとに保健所に報告します。1週間で来院した数字を平均し、5を超えるとその地域に感染警報がだされます。週5日の診療で 1日平均1人以上の来院があることを示します。
 手足口病は、コクサッキーA16 エンテロウィルス71が主な病原ウィルスです。口腔粘膜 手掌 足底などに水疱が出ることが多いようです。1歳未満の児では、口が痛いとミルクも飲めず脱水で入院が必要になることもありますが、多くは4-5日で治る病気です。ワクチンはありません。鼻水や唾液を介して、子ども同士に感染が拡大します。昔は2-3日高熱を発した例がおおかったですが、最近はあまり高熱例がみられません。しかしこのウィルスが心筋に侵入して心筋炎を合併したり、まれに脳炎を併発することもあります。
 過度な警戒はいりませんが、子どもの手洗いやうがいをうながしてください。そして手足口病をうたがったら、医療機関の受診をお勧めします。(文責 院長・若杉 直俊)